第壱拾話 開戦ハイ・エンド・コロシアムのA会場の第一回戦の会場で戦うファントム達の試合の最中、今A会場に辿り着いた一人の男がつぶやいた。 「…ここが、ハイ・エンド・コロシアム…」 男は、右手の人差し指についている宝石のついている指輪に向かって語りかける。 「…こちらセルフォルス。ネビス、クロード、聞こえるか。今会場についた。」 「オヤ?、もう見えてきた様ですよ、ハイ・エンド・コロシアム。」 看板にハイ・エンド・コロシアムの募集が当てられていた。 真白い髪をした少女が一本の槍を携えながら、密林を越えた国境の狭間に建設されてある、ハイ・エンド・コロシアムを見つけ出した。 「セルフォルスのおかげで、こんな簡単に人の集まる場所が見つかるとは…」 国境の狭間に作られたこの会場では今、大いなる戦闘が繰り返されている。 モンスター同士か冒険者同士。 またはモンスターと冒険者がタッグを組んで戦い、勝者を決めるのだ。 参加者は数多くの街から集まってきた強いと言われている冒険者ばかりだ。 名を言えば並の冒険者なら恐れを成すような選手ばかり。 しかし、その中で勝利を手にした者はこの世で一番と言われる称号を頂ける。 しかしその称号は冒険者達を束ねる事も出来る、しかしその称号目当てに殺されてしまうかもしれない。 まさに、最後の殺し合いと呼ぶに相応しい会場だ。 「アト、イル血ノ量ハドレクライダ?」 ソウルのような遠雷のような低い声、轟く声の持ち主は、黒く光、漆黒の龍、黒龍スウォームだ。 いつものような人の姿ではなく、今は紅龍、祖龍のように巨大な龍の姿であった。 「もう少しほどで御座います、祖龍様は生け贄を待ち望んでいます。」 「分カッテイル、我ラハココデ奴ラヲ殺セバ、問題無イ。」 「その通りで御座います、黒龍様と私に掛かれば、冒険者など、赤子の手を捻るような物です、不意を突かれないように、いたぶらずに、すぐに殺しますから。」 「紅龍様、いかがなさいますか?。」 クロードは紅の鱗を纏う龍、黒龍の亜種で有る伝説の三頭のモンスターの一人、紅龍に跨っていた。 「そうですな、クロード殿。貴方様も武器の扱いを覚えになった方が宜しいかと思われます。」 丁寧な言葉使い、黒龍とは違い無礼を弁えているのだ。 大空を舞う姿は誰にも見えない、大空、それは地面から離れた場所、雲を突き抜け太陽の日差しを大いに浴びている。 「どういう事だ?黒龍が負けるとでも?」 実際、クロードは黒龍よりも、ネビスよりも位が高い、そもそも龍を操る者となれば、龍よりも強くなくてはならない。 クロードは黒龍よりも、ネビスよりも、紅龍よりも強いのだ。 だが、無礼を弁えているクロード、キチンと紅龍に様を付けている、紅龍は上の位と認めているので、殿を付けているのだ。 「はい、黒龍は負けます、今あの二人が向かっている所に居るであろう8人の勇者は、祖龍様が出る暇も無く、倒せるでしょう。しかし、何か不吉なものも感じますし勇者達6人だけですら黒龍とネビスの力では足止めも出来ないでしょう。」 「…ヴァン、ロレッタ、、アシャー、レヴァル、ラムサス、キャロルの6人か。」 「その通りです、あの6人が居る限り黒龍達に勝ち目は無いでしょう。クロード殿も無傷では帰れないでしょう。」 明暗のような声、クロードと紅龍の額を一滴の汗が流れる、大空を舞う安定感の無い飛行に、クロードは少し揺れた。 「決め手は、やはり武器でしょう。奴等は全員、武器の扱いは人間でも最強クラスですが、武器を扱えるだけ奴等に勝つ確率が増えるのでは?」 飛行中の紅龍は最初飛び立った砂漠を抜けて、もう密林に差し掛かっていた、全ての始まりの大地を下に見るように、大空を舞う。 飛行の音は他のモンスターと異ならない、全てを超越した三頭の龍だけに、羽ばたきの音も、飛行のスピードも違う。 クロードは向かう、祖龍復活の鍵となるべき魂の指輪を探しに。 後、二日全てが動き出す、ハイ・エンド・コロシアムで…………… |